ご主人が亡くなり、半年過ぎたころに、税務署から“相続税についてのお知らせ”が妻の華子さんの元に届きました。
夫の生前、医療費控除のために確定申告を夫がしていたことはありましたが、
普段、縁のない税務署からの封筒に、ドキドキしたそうです。
この“相続税についてのお知らせ”が、なぜくるのか、不思議ですよね。
金融機関も、死亡届すると口座が凍結されます。(銀行の担当者が死亡を把握した場合は、遺族の届け出より先に、口座が凍結されることもありますが。。。)
税務署へは、届け出をしないのに、なぜ「お尋ね」が来るのでしょう。
これは、相続税法第58条によって、税務署は「いつ、だれが死亡したのか」を自動的に把握するからです。
相続税法第58条
市町村長その他戸籍に関する事務をつかさどる者は、死亡又は失踪に関する届書を受理したときは、当該届書に記載された事項を、当該届書を受理した日の属する月の翌月末日までにその事務所の所在地の所轄税務署長に通知しなければならない。
と定めています。
この法律により、役所へ死亡届を提出すると、自動的に役所から税務署へ死亡したことが通知され、
“相続税を申告してくださいよ~”の通知をするというシステムが出来上がっているわけです。
税務署は、KSKシステムによって、申告が必要な人をピックアップしています。
基準は
・過去の確定申告書
・固定資産税台帳
・保険金の支払調書(保険金を支払った場合、保険会社から税務署へ提出)
必要に応じて、金融機関などに紹介して、相続税の申告が必要である可能性が高い人に
「お尋ね」が送付されています。
KSKシステムって、なに?
上記のKSKシステムとは国税総合管理システムのこと。
全国12か所の国税局(沖縄については国税事務所)と524税務署をネットワークで結び、納税者の過去の申告状況や納税情報を一元的に管理するものです。
KSKシステムには、
過去に提出した申告データやその他の様々な情報が管理されています。
H13年から運用されています。
恐るべきシステムですね。
お尋ねをスルーする?
夫の財産を把握するすべが税務署にはないはずだから、相続税の申告はしないと
。。。考えていると、ひどい目にあうことになります。
相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日から10か月です。
相続人の確認に時間がかかることもあります。
家族の知らない財産や借金があるかもしれません。
財産の評価に時間がかかるかもしれせん。
遺産分割協議がうまくいかないかもしれません。
届いたら、どうする?
お尋ねが届いたら、うちは関係ないと思わずに、同封されている相続税の申告の可否判定表を元に、計算してみましょう。
申告が必要であれば、速やかに申告準備をしましょう。
最後に、プチ情報
ちなみに、この相続税法第58条は、2022年10月に改正が入り、通知義務者や通知先 通知義務の対象が変わります。
死亡届事項の通知義務者が市町村長→法務大臣
通知先が所轄税務署長→国税庁長官
市区町村長の通知義務の対象が、当該死亡者所有土地・家屋に係る固定資産課税台帳の登録事項に変わりました。
通知期限は同じです。
この改正の施行期日は、令和6年3月1日又は改正戸籍法施行日(令和6年5月31日までの日)のいずれか遅い日です。
デジタル庁が創設され、世の中のデジタル化が進むということは、いろいろな情報が
カチっとするだけで集約されてしまう恐ろしさもありますね。
皆さんのお手元に「お尋ね」が届いても、びっくりせずに、遺産の把握が難しい場合は専門家の門を叩いてみましょう。